DEXCS:デックスは、平成28年度において公益財団法人JKAの機械工業振興補助事業(研究補助)「平成28年度 社会インフラ設備機械の安全性を保証する粒子モデルによる破壊解析の実現 補助事業」として研究開発を進めました。ここでの成果を情報発信します

補助事業番号  28-115
補助事業名   平成28年度 社会インフラ設備機械の安全性を保証する粒子モデルによる破壊解析の実現 補助事業
補助事業者名  岐阜工業高等専門学校 建築学科 教授 柴田 良一

1 補助事業の概要

(1)事業の目的
 東日本大震災の影響は未だに続いており、単なる1つの自然災害の被害に留まらず現代社会の電力を代表とするインフラ施設に対する安全性の確保に関して、これまで以上の高度な安全性の確保が求められています。つまり原子力発電施設などの非常に重要な構造物の場合には、地震災害においては機能の損失だけでなく、放射能流出などの二次的な被害が非常に長い期間影響することが大きな問題となっています。そこで、二次被害も防ぐ高度な構造物の安全性の確保が不可欠であり、これを実現するための評価分析手法の確立が緊急の社会的課題です。
本研究では、世界中の研究者や技術者が開発し公開しているオープンソースのCAEソフトウエアとして米国サンディア国立研究所が提唱しているペリダイナミクス破壊解析ツールに注目し、これに各種の支援ツールを集約し再構築することで実践的なものづくりに即効的に活用できるオープンソースの破壊解析設計支援システム(オープンCAE)を開発し、無償で公開し自由に活用できることを目的とする。

(2)実施内容
  このような構造物の高度な安全性を確保するためには、単に発電設備の構造体だけの問題に限らず設備や配管における評価分析が必要になります。これを実現するためには先端的な一部の技術者が特殊な破壊解析技術を活用するだけでなく、広く日本のものづくり全体に対して破壊解析技術の普及を図り、安全確保に対する基盤技術の底上げが必要になってきます。  よって本研究では、広く技術者が活用できる高性能PC程度で数値計算が可能で、ソフトウエアが自由に利用できるオープンソースを活用することで、総合的な高度安全性確保を目指しています。具体的な研究内容を、6つの側面から説明します。

【状況】東日本大震災は4年以上が経過していますが、東北各地には未だに大きな混乱を及ぼしています。1つの自然災害がもたらした甚大な被害は、計り知れない不幸と損害を未だに増加させている状況と言えます。二度とこのような状況を繰り返さない社会努力が急務とされます。
【背景】今回の甚大な被害は単純な地震災害や津波災害だけでなく、それにより破損した原子力発電施設が放射能流出を引き起こしたことが背景にあります。つまり社会インフラ設備機械の設計においては、単に機能の喪失だけでなく破損による二次被害も防止する必要があります。
【課題】機械構造物の破壊を分析するには、従来の有限要素法を基盤とする数値解析手法では対応できず、これまでは実験的手法に依存していました。しかし実物実験は莫大なコストが必要であるため限られた条件のみとされ、構造物の破壊に対する検証は十分ではないのが現状です。
【目的】そこで本研究では、自由な条件設定を検証できる数値解析において破壊現象を分析する方法として、米サンディア国立研究所の提唱する粒子モデルのペリダイナミクス破壊解析ツールを基盤に、構造物の設計に活用するための設計支援システムを実現することを目的とします。
【開発】ここで開発する破壊解析システムは、オープンソースで公開された各種のツールを統合することによって構築されます。基盤としては自動車部品メーカーのデンソーと岐阜工業高等専門学校との共同研究成果であるDEXCS(デックス)を用いて公開を前提に開発します。
【評価】ここで開発されたシステムは、単なる研究用に留まらず常に企業技術者の実践的な視点からの評価を受けるために、地域での小さな勉強会活動などを主宰し現場基準での評価を受けることを試みています。本研究の成果は単なる論文発表だけでなく十分な実践的な評価を受けながら展開します。

2 予想される事業実施効果

 構造物の安全性を保証するための粒子モデルによる破壊解析システムに関する研究において開発された研究開発用の破壊解析システム:DEXCS-Particleを公開することによって、以下の効果が期待されます。
・研究開発用の破壊解析システム:DEXCS-Particleは、オープンCAEとして無償で公開されるため、特に中小企業では、導入経費を必要とせず、ものづくりの高度化に企業技術者が挑戦することができます。
・研究開発用の破壊解析システム:DEXCS-Particleは、先端的なものづくり企業で製品の高度化で目標とされている破壊解析に対して、設計者自らが解析を実行する設計者CAEを実現する手段として、大きな貢献ができます。
 さらには、本研究で開発されたオープンCAEによる破壊解析システムは、無償で自由に利用できることから利用者を制限することなく普及することが期待され、これに対応した研究会なども展開しています。また研究会を母体にした新規の開発も可能であり、ものづくり支援の始点となる研究開発です。

3 補助事業に係る成果物

(1)補助事業により作成したもの
研究開発用の破壊解析システム:DEXCS-Particle(オープンCAEによる破壊解析)
公開システムのファイル名: DEXCS2015-Particle-64(64bit) 起動用ISOファイル
 (URL http://dexcs.gifu-nct.ac.jp/download/)  ダウンロードページ

今回は、更新したベースシステム「DEXCS2015-Particle-64」に対して、統合支援ツール「FRAXST」の最新版を統合することで、開発後のバグフィックスなどに柔軟に対応可能としています。

(2)(1)以外で当事業において作成したもの
破壊解析の基盤となる構造解析の基礎を学ぶ教科書を出版しました。
書名:オープンCAEで学ぶ構造解析入門 ―DEXCS-WinXistrの活用―
発行:朝倉書店  ISBN:78-4-254-20164-2
 (URL  http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-20164-2/)

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